教師を辞めた後、Webデザインを学ぶために都内で物件探しをした時のことです。
ある不動産屋さんのお兄さんから、車の中で
「どうして先生やめたんですか?もったいないですよ!今の状況じゃ物件契約できませんよ!」
ってある意味なじられたことがありました。
ちょっと悔しいけど、的を得ていたかもしれませんね。
そんな思いをすることはわかっていたのに、教師を辞めてまでWebデザイナーを目指した理由をお話ししたいと思います。
組織への嫌悪と無スキルへの危機感!
2021年、教師を退職しました。31年目でしたけど、続けられない状態になってました。
原因は、いろいろありましたが、ここではもう触れないようにしたいと思います。
簡単に言えば、「組織を憎んで人を憎まず」と言ったところでしょうか。
学校だけでなく、世の中は組織集団で社会が動いているわけなので仕方がないのですが、さすがに自分の身に厄災が降りかかり、それを跳ね除けるには教職を撤退しなければならなかったのは、悔しさがないと言ったら嘘になります。
学校の職員室という異質な空間の中で、1年以上にわたって自己保身のために部下を犠牲にする環境は撤退するには十分でした。
けれども、今はもう仕方がないことだと割り切るようになりました。
組織というものは、自分を守るためには、相手を貶めてマウントをとっても平気になる人間をつくりだすところだということです。
なので、それに気づかせてくれたこと、そして一人で食べていくためのスキルが必要であることを示してくれたので感謝しなければいけないかもです。
おかげで、こうしてWebデザインで食べていく目処ができたわけなので・・・。
教員を辞めてもう2年になります。
この間、今のスキルを手に入れるまで、血の滲むような努力をしました。大袈裟ではなく、圧力に耐えて自分を押し殺して教師を続けていた方がずっと楽だったかも・・・。
でもこうしてWebのスキルを身につけた自分は、定年とか退職とか関係のない自由を手に入れた感じがします。
このまま、60まで教師を続けて、無スキル状態で世間に投げ出されていたら、と考えたらゾッとします。
それだけ、無スキルへの危機感があったということです。
教師は無スキルなのか?
きっと、皆さんここに興味があるかと思うのです。
半分正解、半分間違いといったところかもしれませんね。
だって、教師になるには教員免許が必要ですし、その免許を取るには、教員養成のカリキュラムを大学で経ないともらえないわけで。
免許を取るために独学で勉強して資格を取得できる類のものではないんですよね。
そういう意味では、医師と同じように崇高な資格であるとも思います。だから「先生」と呼ばれるのかもしれません。
しかし、その割に、世の中の扱いは年々雑になっていくだけでなく、その崇高さを利用して低額で働かせるところまで落ちてしまいました。
現場の先生方は本当に粉骨砕身で心身を削って働いています。しかし、それをわかってくれる人は誰もいないだけでなく、身内であるはずの管理職や教育委員会ですら先生方の苦労に寄り添うことはありません。彼らが目を向けているのは、保護者への忖度と出世と己の保身しかない人が多いと30年の教員生活で体感してきたといえます。
教師のスキルが活かせる領域はあるのか?
退職後の2年間、実はこのテーマで世の中と向き合ってきました。
Webデザインを学びながら、民間で働いている人々との交流や情報収集を通じて私が得た感触は、”辞めた教師には誰も見向きをしない”という現実です。
教師が「先生」と言われてチヤホヤされるのは、あくまでそれが学校という組織に所属して、ある種子どもを”人質”にとっているからということが分かりました。
「元教師です」と自己紹介しても、「あ、そう」てな具合で何もそこから話が広がるわけでなく、交流会でも一人ポツンとすることが何度もありました。まー、自分の魅力がなかったからなんでしょうけども。
面白かったのが、「スキーのインストラクターやってます」というと、なぜか東京では興味を持ってもらうことが多いのです。
地元では鼻も引っ掛けられず、「雪かきでクソ忙しい時に遊びにばかり行きやがって」ってな具合だったんですけどね。
人が求める価値って場所が変われば大きく変わるということですかね。
少なくともビジネスの場では、スキーインストラクターの方が学校の先生よりも価値は何倍も高いという現実を思い知っています。
じゃあ、教師のスキルが活かせる領域があるのかというと、残念ながらありません。
塾講師は?
実は塾講師の世界は、教科での数字を上げることに特化した世界なので、学校の教師のような”見えない子どもの学びの領域”に特化することはないのです。
あくまでも教科の成績、受験の数字を上げるためのスキルだけに特化した領域なので、学校の教師の持つ学びを見つめるスキルはノイズにしかならないと考えられています。だから、元学校の先生の評価はとても低いと言わざるを得ません。
教師から転身するには
教師から転身するには、まず教師という殻を捨てるところから始めないとダメでした。
ゼロからのスタートというよりは、マイナスからのスタートです。
自分の感覚では、ゼロになったのがWebデザインスクールを卒業してようやくといったところですね。
ポートフォリオをつくり終えてようやくプラスに転じてきたという感覚を持っています。
私の場合は、教師時代の経験は今のところほとんど役に立っていません。
唯一、大学院で学んだデザイン思考や若者との協働性の育み方や学ぶことを楽しむ姿勢といったところでしょうか。
それから自分の場合は、9年間学校を離れて文化財の世界で揉まれてきた経験がありました。こちらの方は今のスキルを獲得する上でベースになってきたといえ、やって良かったなーと感じています。
厚生労働省が最近ポータブルスキルという概念を打ち出していますが、このポータブルスキルを発揮するためにも、まずは専門スキルが必要です。その意味で、教師はマイナスからのスタートと言わざるをえません。残念ですが・・・。
それでも教師からの転職を考える人に
35歳までなら、転身はあり
35歳までの教師であれば、Web業界への転身は可能性があります。
どの業界出身でも同じですが、35歳までであれば、正社員として受け入れる環境が揃っています。
未経験であっても、独学またはスクールでWebやプログラミングスキルを身につけられればいけると思います。あとはやる気と相性でしょうか。
35歳以上は教師の仕事をしながら、スキルを身につけよう!
35歳以上の人はいきなり辞めることは絶対におすすめしません。
もし家庭を持っているのであれば尚更です。周りの人をみな不幸にしてしまうかもしれませんしね。それに退職金も大きな額が期待できないので、不安が増大してしまうだけになってしまいます。
学校は激務で時間がない中ですが、なんとかやりくりして、数年かけてもいいぐらいの覚悟でスキルを身につけてから転職活動、もしくはフリーランスへの道を探った方がいいかもしれません。
50歳以上で早期退職からの転身は
実は私もこのカテゴリーです。
はっきり言います。無謀なので辞めた方がいいでしょう。失うものが大きすぎます。
私もパートナーをはじめ多くのものを失いました。
長年住んできた地方のコミュニティ、親類縁者まで実に様々です。
それらのリスクを背負ってもやりたいのであれば、大いにやってみてはいかがでしょうか。
その前に、今の自分のスキルチェックが必要です。
どの程度プログラミングやデザインの知識があるのか。
まずもって、基本的にタッチタイピングができるかどうか?です。
転職サイトに登録するとWeb上でタッチタイピングテストができるように今はなっています。
つまり、最低限のタッチタイピングができなければ、使い物にならないということです。
実は私も、退職時はほとんどタッチタイピングができませんでした。
そこから、1年以上かけて、一分間120文字、95%の確率をローマ字と英字で打てるように毎日トレーニングしています。最低限プログラム界隈で転職するのならタッチタイピング3級以上のレベルにならないと誰も評価はしてくれません。
組織に頼らず、自分の身一つで食べていくということはここから始まることを覚えてほしいと思います。
組織は教師を守らない
ここでいう組織というのは、教師にとっては学校管理職、そして教育委員会です。
まあ、彼らには彼らの論理があるので具体的に触れても意味がないのでやめときます。批判を書いても自分を下げてしまいますので。
でも、これだけは言えるでしょう。組織は教師を守りません。子どもと向き合う最前線で自分を守るのは自分しかいないということです。それができない人は早く撤退をした方がいいですね。心と身体をを守るためにも。
三十六計逃げるに如かず
孫氏の兵法に「三十六計逃げるに如かず」ということわざがあります。”迷ったときには機をみて身を引き、後日再挙を期すのが最上の策である”とする教えですね。
生活のために辛い立場に身を置くよりも、教育から撤退した方が良いと素直に思いましたね。
誰もこの自分の辛さをわかってくれないし、貴重な時間を無駄に過ごすことはもうしたくないと思ったのが大きいからです。
退職後は独学でやっていたコーディングをプロレベルに高めることに全力を尽くしました。
退職を決めたことによって、新しい生き方が動き出したような感じです。
だから、逃げることも大切なことだなーと思いますね。
昭和生まれの自分の世代は、歯を食いしばって困難に立ち向かうみたいなことが美徳とされてきました。
けど、今はそんなことをしなくても情報があふれている時代です。心地よい環境に自分の身を置く術を身につけた方がより合理的だと思うのです。
最後に ー辞めてどうする?教師のリスキリングは?ー
私の場合、コーディング術を多少なりとも覚えがあったので、それを元にまずはコーダーとしてのスキルを整え、さらに上流のデザインを学びその仕事にアプローチを始めたところです。
正直、ここに至るまで、結構な時間を要しました。
勉強を始めて約1年半がかかったという感じです。これは長い方です。きっと、自分の歳のせいもあると思います。
もっと若い人なら1年もあればWeb制作は十分リスキリングは可能かなと思います。
それよりも気をつけてほしいのは、一般の方の転職と違い公務員の場合、転職やリスキリングに対して一切優遇措置がないという事実です。
つまり、全て、実費でリスキリングを図らなければならないということです。
これは雇用保険が適応されないことが根本にあり、公務員の働き方が退職まで勤め上げることを前提に制度設計されていることにも起因します。
ですので、教師をやめようと思っている人は、いきなり辞めることだけは避け、ギリギリまで給料をもらいながらスキルアップを図る方法を考えた方が良いかと思います。
私は1990年に教職に就きましたが、その時から見てきて、教師の仕事は本当に報われなくなったと感じています。
ですので、悩んでいる人がいたら、迷わず撤退の道を考えることをおすすめします。
今後はその具体策についての記事も挙げていきたいと思いますので。